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恋せよオトメ。浅野妙子・連載・エッセイ

女友だちとのつきあいは、なぜこんなに難しいのか。

男女の愛情と違って
実感の薄い「友情」という言葉を、あまり信じられない。

女友だちって難しい……と、近頃つくづく思うようになった。

そもそも私は、男女の愛情と違って実感の薄い「友情」という言葉をあまり信じられない。
だからドラマの中でも友情という言葉はなるべく使わないようにしているし、登場人物が一致団結し友情をうたいあげないことには収まりのつかない学園ドラマは、一生かかっても書けないと思っている。

友だちなんて、究極、一人もいなくてもいいというくらい割りきった気持ちでいるせいか、身辺に残った親しい人は、ごくわずかしかいない。じゃあ、その人たちと自分を繋いでいるものは一体何かというと、言葉にするのは難しいが、「お互い、生きてるね。大変だけど、頑張ろうね」というような、いたわりの心であるような気がする。この感覚は、四十年生きてきたからこそ、湧いてきた感覚だ。

200906_1去年放送された大石静さんのテレビドラマ「四つの嘘」は、女同士の決してキレイごとでない愛憎いりまじる関係性を描いた興味深い作品だが、その中で、とりわけ印象に残ったのは、終盤、永作博美演じるヒロインの詩文が、寺島しのぶ演じる専業主婦の友人・満希子と対決するシーンだった。
二人は決して「仲良し」ではない。
詩文は、融通がきかずすぐにヒステリーを起こす満希子を敬遠しているし、満希子は奔放で男にだらしない詩文を恐れつつ軽蔑している。お互い、あんな女にはなりたくないと内心では思っている。
ところで、生真面目だった主婦の満希子は息子の若い家庭教師との恋愛に我を失っていく。
詩文は、男が決して恋に本気ではなく、どうやら金づるとして満希子を利用しているらしいと察して交際をやめるように忠告する。
満希子はその言葉を聞いて、詩文が彼を横取りしようとしているのではないかとあらぬ疑いを抱き、
「お願いだから、私の恋を邪魔しないで! 一生に一度の恋なの」と、必死で言いつのる。

女は幸せ比べをする生き物なのだ。
目の前の女に比べて自分が幸せかどうか、
ついつい比較する。

この時、詩文は、同じ土俵に立って腹を立てたりしない。
『そうか。そんなに彼が好きなんだ。恋してるんだね。だったら好きにしなさい。あなたが思いたいように思えばいいよ』と、口をつぐむのである。
この時の、ひとことも言葉に出さずに目だけで視聴者に心情の変化を悟らせる、永作の表情が卓抜だった。
相手の背後に、その人の生きてきた歴史を見つめて、いたわりを感じつつ相手を許す。
女の友情の極意かもしれない。

200906_2女同士の友情が成立しにくい一つの理由に、相手への対抗心がある。
これも去年の作品だが、井上由美子さんのドラマ「スキャンダル」。
第一話で、過去に繋がりのあった友人たちを自分の結婚式に一堂に集め、戸田菜穂演ずる花嫁が、「私、勝ったわ!」と言ってのけるシーンには「そうそう。これが女よね」と実感したものだった。
実際に、こんなことを口に出して言う人はいない。
でも、心の中で密かに思っていたりするから怖いのだ。

『私はあなたよりもいい男と結婚した。あなたよりも夫に愛されている。見て。私は幸せよ』……なんてことを。

女は幸せ比べをする生き物なのだ。
目の前の女に比べて自分が幸せかどうか、ついつい比較し、確認し、優位だと思えば満足し、負けたと感じればすねたり落ちこんだりする。逆に、長くつきあえる女友だちは、そこらへんを超越できる人、人生の好不調の波に関係なく、フラットにつきあえて思いやりを持ち合える人ということになるのかもしれない。

私には十歳年上の、いい女友だちが一人いる。三十の時にご主人を事故で亡くし、以来、一人で生
きてきた人だ。子供も一人、生まれてすぐに病気で亡くしている。
というと悲惨すぎる印象だけれど、本人は恬淡として明るく、全く孤独を感じさせない。
今は五つ年下の恋人がマレーシアにいて、日本で働きながら、半年に一度ほど滞在して海辺の町の逢瀬を楽しんでいる。心穏やかに、あるものをあるがままに受け入れて、無理せず生きているところがとても素敵で、しょっちゅう会っているわけではないのだが、会うたびに、その自然な優しさに癒される。

一方で、十年以上親しくつきあってきたのに、このところなんとなく会いづらくなってしまった年下の友だちもいる。理由は、私がうっかりと無神経なことを言って彼女を傷つけてしまったから。
私は人とわかりあいたいという気持ちが強すぎて、ついつっこんだことを聞きすぎたり、言い過ぎたりする傾向がある。わかっていながら、時々失敗する。
実はこんなことをつらつらと書いている理由も、どこかで彼女のことが心の中にひっかかっているからかもしれない。
人ってなかなかわかりあえないものだ。しゃにむにわかりあおうとするのは子供っぽい態度で、友情を長続きさせるには、「四つの嘘」の詩文のように、時には誤解をそのままにして、泰然と相手の変化を待っていられる心の寛さが必要なのかもしれない。
なかなかそんなオトナの境地にはたどりつけない私だが……。
欠点があるのはお互い様。女ともだちとは、互いにそれをわかりあえる仲でいたい。

(Oggi2009年6月号掲載 イラスト/大橋美由紀 本誌デザイン/十時かの子)




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プロフィール

'94年に『無言電話』で第7回フジテレビヤングシナリオ大賞にて佳作を受賞後、『ラブジェネレーション』( '97)や、『神様、もう少しだけ』( '98)、『大奥』( '05)、『ラスト・フレンズ』( '08)、『イノセント・ラヴ』( '08)、『八日目の蝉』( '10)、『月の恋人』( '10)など、数々の大ヒット作品の脚本を手がける。


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